Syllabus

参考文献と読むべきペーパー


 

国際理解を深める障害児教育とインターネットの活用

          兵庫教育大学 成田 滋  日本特殊教育学会第33回大会発表論文集. 952-953.
はじめに

「情報処理の促進に関する法律」に基づく通産省所轄の情報処理振興事業協会にある「教育ソフト ウエア開発・利用促進センター」と「コンピュータ教育開発センター」(CEC)は共同事業として、 全国100か所程度の小中高校、特殊教育諸学校においてネットワークを活用した教育・学習や交流 を可能とする技術的な環境を整備しようとしている。これがいわゆる「100校プロジェクト」であ る。このプロジェクトでは、小中高校、特殊教育諸学校に通信機器を設置し、こうした学校とセン ターをネットワークで結ぶことによってセンターのデータベース等のアクセスはもちろん、国内外 の学校などとの絵や写真などの画像を交えた手紙のやりとりや学校関連の情報の受発信、世界各地 の情報資源の活用、遠隔地の学校との共通テーマに基づく調査や研究などが可能となる。  このように我が国の初等中等教育において、現在はまだ一握りの学校ではあるが、児童生徒が情 報活用能力を育成するためにインターネットという世界をつなぐ情報網の結合体に乗り入れる基盤 的な整備の第一歩を踏み出したといえる。障害児教育の分野においても大阪市立聾学校をはじめ、 いくつかの学校が「100校プロジェクト」として指定され、情報資源の積極的な活用と学校間、あ るいは生徒同士の交流が期待されている。それと同時にこうしたネットワーク上の豊かな資源をど のように教育に活用するか、また情報の発信によってどのような貢献が世界にできるかが課題と なっていきている。本発表は、子どもの情報活用能力を国際理解を深める情報資源の探索や収集と いう視点からとらえ、その手法や効果的な利用方法の提言を行い、今後の新しい障害児教育の方向 性を模索することを目的とする。 I. インターネット上の情報の探索

 デジタルの文章には、ハイパーテキストという考え方がある。たとえば、文章の中の単語の説明 が必要なときはわからない部分を指示すればその説明文をすぐに表示する仕組みである。文章だけ でなく絵や静止画、動画、音声も表示できる。この考え方を広げて、文章やグラフィックに組み込 んだり、他のコンピュータネットワークや情報を貯蔵するサーバーに接続することができる。情報 が絡み合って世界中に存在し、それを半自動的にアクセスすることができる。この仕組みは、 World Wide Web-WWW(世界を覆う網目)と呼ばれている。WWW上ではキーワードや絵をクリッ クすることにより、世界中を網羅するインターネットから知りたい情報を入手することができる。 WWWとは言い換えれば、ハイパーテキストに基づく情報の整理法であると同時に検索法とでもい える。 II. 障害児教育になぜ

 インターネット上の情報検索サービスであるWWW(World Wide Web)は、瞬時に全世界へ情報を 提供したり、受信することができるシステムである。障害児教育になぜインターネットの活用なの か、という問いがある。それは、教育の営みが学校が所在する地域や県だけでなく、全国、あるい は世界中に障害児教育の実践を伝えるとともに、それに対する関心を喚起しフィードバックを活用 して、よりよい教育実践を改善するのにも有用な手段であると考えられるからである。同時に、他 の学校などの実践もインターネット上で知ることができ、その逆に情報の受け手がフィードバック を返してやることに相手の実践にもなんらかの貢献をすることができる。この相互性がWWWの最 も重要な視点になる。その果実は、教育全体の双方向的な関係の構築が可能であることである。こ れまでのような主として研究者が文字情報を扱っていたインターネットが、研究やビジネスの世界 のみならず、マルチメディアやハイパーテキスト環境を使った障害児教育の新たな実験場として展 開する可能性がひろがっている。 インターネットの中へ  教職員の活用    情報の検索・収集・活用   情報の交換  生徒の活用 電子図書館、電子博物館、電子美術館、   共同学習、調査、   ネットワークカンファレンス   多文化理解   外国語理解   国、地域社会、学校、生徒の紹介    情報の提供 掲示板、メール  情報の活用 学習、余暇活動  情報の発信  特徴   文字、音声、静止画を利用できる。   視覚的に操作できる。(Graphic User Interface-GUI)   広範囲に普及することができる。 コミュニケーションのための使い方  デジタル専用回線やISDN回線の普及、さらにはインターネットの流行により最近はテレビ会議の システムが話題になっている。通常は、遠隔地同士でリアルタイムに会議ができるようにというの がテレビ会議のそもそもの発想であるが、特殊教育諸学校では、たとえばテレビ電話としたコミュ ニケーションができる。現在、福岡聾学校では2台のコンピュータを通信プロトコルであるイーサ トークで繋ぎ、それぞれにビデオカメラを接続して手話を用いたテレコミュニケーションを行って いる。ビデオなどの映像入力が可能な機種であれば環境はすぐに整う便利なテレコミュニケーショ ン方法である。以下、福岡聾学校でのテレコミュニケーションの様子である。   ”初めてCU-SeeMeを使ったとき、子供たちはおおはしゃぎでした。コンピュータの中   に自分たちが映っている、しかも隣の部屋にいる友達の姿が見えるのですから。最初の   うちは2つの部屋を行ったり来たりしてお互いに映っていることを確かめ合ったりしま   した。それからは、ビデオカメラの前でパフォーマンスの競演です。みんな好きなこと   を繰りひろげます。イーサネットで接続した場合、13〜15fps/secで映像を送ることがで   きます。スムーズな動画といわれる30fps/secの約半分ですが十分に伝わります。   2回目以降、CU-SeeMeを使って子供たちはさっそく手話でのコミュニケーションを始め   ました。最初の頃はいつもと同じ速さで手話を使うために読み取りにくく、何度か繰り   返して言わないとダメでしたが、回を重ねるうちに器械の速さにも慣れ、表現・読み取   りともによくなっていきました。また、相手を意識して間をとったり、合図を送ってか   ら話し始めるなど、会話の間合いの取り方がコミュニケーションらしくなりました。”   (県立福岡聾学校小宮教諭の報告から)   III. 課題とまとめ

 障害児教育の学校は、あらゆる情報サービスから取り残されている。こうした閉塞的な状況を打 開するために、情報活用能力の育成という観点から教育ネットワーキングの利用を念頭に置いた教 育の改革が考えられる。インターネットは豊かな情報資源であり、また有効なコミュニケーション の手段となることが理解されつつある。しかしながら、現状ではネットワーキングにかかわる次の ような課題が山積している。 1) 法体系と行政  電子化・ネットワーク化時代に適合しない法制度や行政の仕組み  行政の教育ネットワーキングの利用に関する問題意識  通信コストの高さ  通信インフラ整備とハードウエア先行の風潮  2) 学校  学校の体質の課題: 外部との隔離、単一集団性、指導要領の硬直性、教師のゆとりの不足  機器やソフトウェアの不備  使いやすさというインターフェイス、技術の壁  流すべき価値ある情報の不足  デジタル情報リテラシーの不足  通信する相手を捜さねばならないという課題  ネットワーキング上では、国や国境や国籍は存在しない。いわばパスポートも必要としない仮想 のコミュニティが存在している。国際理解教育では互いの違いを知り、相互に学び、啓発しあう姿 勢が要求される。そのためには学校を開き、生徒を世界に紹介し、世界を教室に近づける努力が必 要である。インターネットには「Communicate globally, access locally.」ということを体験できる世 界が拡がっている。 参考文献

 小宮幸三(1995). CU-SeeMeでのコミュニケーション. 障害者とコンピュータ利用教育研究会   NewsLetter, NO.57, 22-3.  栗原正勝(1995). インターネット入門キット. 秀和システムトレーディング

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