Syllabus

参考文献と読むべきペーパー



 

障害児の教材開発に及ぼすインターネット上の教育情報活用
	             兵庫教育大学 成田 滋

はじめに
 さまざまな教授や学習の工夫を凝らす中で、フロッピーディスクやCD-ROMで提
供される教材が流通してきた。今や機器の進歩やマルチメディア環境の充実によっ
て、こうした媒体だけでなく、ネットワーク上で教育情報資源が普及しつつある。
 しかし、教授学習過程において、どのようにして適切な教育情報を探しそれを学
習者に提供するかは、教材の開発者にとっていつも思案するところである。どの生
徒も同じように学ぶ意欲があるという前提に立ち、教師は学ぶことの喜びを生徒に
体験させようと努力する。動作や認知上の困難を伴う生徒の学習には、とりわけ配
慮と工夫が要求される。特にこうした生徒には、彼らが日常知っている事象や身近
な出来事に関連し、とりわけ視覚的な題材は欠かせない。
 障害児の学習環境における次ぎのような障壁もある。すなわち、障害のゆえに生
活体験が限られがちになり、学校や家庭などでの体験がそれ以外の場所や空間での
体験に結びつけることが困難な状況のことである。この懸隔を橋渡しする一つの方
法が仮想現実とかバーチュアル体験という学習環境の設定であり、そのための新し
い教育情報の収集とその教材への活用である。幸い、こうした題材を教材に取り込
む環境が整っている。デジタル化技術、とりわけマルチメディアの環境である。こ
の環境は限定されることの多い障害児の学習領域や内容を豊かにする要素を含んで
いる。
 
I.  教材開発
 現在の教材開発は、1)	独自の創作、2)複写、録音、3) 著作権フリーなどのソー
スからの収集と編集作業が中心である。独自の教材の収集は描写、8ミリ、写真、
録音によって行われる。複写は、いうまでもなくスキャン、模写、ダビングといっ
た作業である。さらに著作権フリーの材料は、CD-ROM、ディスクで流通しており、
またネットワークからのダウンロードによって得られる。こうした作業は、多か
れ少なかれ編集や加工作業が必要とされ、教材開発の大部分がそれに費やされる。
最近では、材料そのままの活用が、授業というプレゼンテーションの中で展開さ
れることも珍しくなくなってきている。


II.   教育情報資源とネットワーク
 独自の材料を使った教材は、本来もっとも望ましい性質のものであるが、個人や
グループで取材することが困難な題材もある。たとえば国外にしかないもの、科学
技術などの専門領域のもの、特定の音声たとえば人、歌、効果音など、仮想の世界
の出来事、たとえば実験から得られる手続きと結果などである。しかし、こうした
課題は国際的な情報通信網といわれるインターネットの活用によって新しい入手の
チャネルが開かれている。
a) インターネットとWWW
 1994-5年度に最も注目された話題は、WWW(World Wide Web)という情報提
供・検索システムである。これはハイパーテキストという情報のランダムアクセス
方法を用いて、グラフィックス、テキスト、映像音声情報を提供することである。
Macintosh上で流通しているハイパーカードのネットワーク版のようなもので、情
報の整理法であると同時に検索法とでもいうべき考え方である。ここでの情報の提
供は、WWW上でホームページという欄を作り、そこに発信や受信の仕掛けを作る。
この場合、HTMLというテキストベースの言語を使い、タグという命令を埋め込む
ことによっていろいろな情報を公開す手続きを書く。
b) WWW上の教育関連情報
 WWWでの情報の多くは、映像が主体となっている。これがインターネットが急
速に普及していることの理由の一つである。映像情報の領域は多岐に渡り世界中の
政治、経済、文化の情報が流通している。具体的にいえば、地理、文化と習慣、観
光、スポーツ、コミュニケーション、各種行事、科学技術芸術音楽建築、
趣味、出版-図書、政府官庁サービスなどなどであり、枚挙にいとまがない。
c) 情報の検索
 世界中のWWW上のホームページから情報を検索するために、いくつかの検索用
のページが作られている。たとえばYahoo,Webcrawler,Lycosなど
のページを開き、必要とする教育情報を貯蔵するサーバーを特定しそこからダウン
ロードすることができる。こうした作業は、通常英語のキーワードを入力して行う。
また、「Internet Yellow Page」という電話帳のような分厚い資料もある。日本
語環境でも最新の情報を検索・提供するページも増えており、年々検索の使い勝手
が向上している。

III.  教育情報の利用と著作権
 ダウンロードした情報を教育上の目的で使う場合、特定のキャラクタなどを除け
ば引用し利用することができると考えられている。著作権法32条	では、「公表さ
れている著作物は、引用して用いることができる。その引用は、公正な慣行に合致
するものであり、かつ、報道批判、研究その他引用の目的上正当な範囲内で行われ
るべきものでなければならない。」とある。つまり教育活動という公正な慣行に合
致して、引用の目的上正当な範囲内であればWWWの画面情報を雑誌、教材に引用
してよいと考えられる。その場合、教材の中に引用する者は、どのような意図で引
用するのかを明確にすべきである。著作権をはっきりと謳う画面でからの複写は、
個人の利用にとどまるべきであろう。なお著作権を明確に謳う場合は、なんらかの
使用手続きをとるべきである。
 最後にほとんどの場合人間の創作物といわれるものは、過去の人々の創造や成果
の上に成り立っている。「創作者は巨人の肩に乗っている」といわれるように、な
にかを作ろうとする者は、巨人といわれる先駆者の創造に依存しているといって差
し支えない。教材の題材となる素材は、誰かがすでになんらかの意図のもとに作ら
れている。それらに規制をかけることは、社会の知的生産を妨げることになる。教
材開発者は、社会の相互作用を配慮しながら、流通する教育情報を公正な慣行に合
致させながら、非営利の教育目的に限定して積極的に活用すべきである。

参考文献

小林 巌(1995). 国際理解を深める障害児教育と「インターネット」の活用. 日本特
殊教育学会第33回大会発表論文集. 952-953.
成田 滋(1995). インターネットにおける障害者情報サービスの現状(2). 日本特殊教
育学会第33回大会発表論文集. 950-951.


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