修論執筆を振り返って
高山 美畝(2017年3月)
修士論文タイトル 中学生におけるレジリエンスと学校適応感・ライフイベントとの関係

【どうしてこれに着目したのか】

 中学校で生徒会活動をする中で、ある意味自主的に活動する場であるにも関わらず、なかなか主体的に活動できない生徒たちに対して、主体性を育むような研究をしたいと思って入学しました。
 なぜ彼らは主体性を持たないのだろうか。なぜ、主体的に動かないのだろうか。という疑問を持つ中、最初は教師の働きかけにおいて、ほめることと叱ることの効果の違いについて興味が移行していきました。
 いくつか論文を読む中、生徒たちは失敗をおそれているのではないかという考えが浮かんできました。私は失敗すること自体はマイナス面だけではなく、プラスの面も多々ある経験だと思っています。しかし、その失敗の落ち込みから回復するかどうかということは重要で、中学生の中には、それができないと思えば自然に失敗を避けるように自分を守るしかないということに気付きました。その中で、落ち込みから回復する力である「レジリエンス」は魅力的な言葉でした。
 中学生は大人からみると些細なことで落ち込み、傷つきます。ほとんどの生徒は回復に向かいますが、なかなかその状況から抜け出せず、不適応になる生徒もいます。その違いは何だろうと疑問を持った時に、適応への資源として「レジリエンス」があることを知りました。生徒たちがこの力を身につければ、失敗や傷つきからの落ち込みを克服できるのではないか、精神的に強くなれるのではないかと考えました。
 ここから、「レジリエンス」に向き合うことになるのですが、何度も壁にぶつかり、私自身のレジリエンスを何度も試され、ボロボロになりながら、何とか研究することとなります。

【苦労したこと】

 レジリエンスについて研究することは決まっていましたが、その何に、どこに焦点を当てるのかということがなかなかできませんでした。 レジリエンスを身につける(高める)という同じ視点で書かれた平野真理さんの論文に出合えたことで、ある程度の道筋は見えましたが、 「レジリエンス」という言葉そのものの概念がはっきりしていないこともあり、研究者、研究スタイルによってとらえ方が違うということで、また悩まされました。 数ある研究者の中で、なぜ平野さんの立場に立つのか、なぜその概念を採用するのか、そのような疑問にこたえられるだけの明確な答えを私は持っていませんでした。 中間先生とお話をする中で、様々な視点を与えて下さり、その中で自分がしたいこと、できそうなことを選んでいく中で、徐々に徐々に絞れてきました。 しかし、考えていることを文章化することは簡単ではなく、自分では理論をもって書いているつもりでも、論がずれていくことが多々ありました。 それを先生は丁寧に読み、細かくご指導してくださいました。特に問題意識は大切だからと最後の最後まで(提出3日前まで)ご指導いただきました。 私自身が根負けするほど粘り強くご指導いただきましたが、振り返るとそれをきちんと書いたからこそ、最後の考察が膨らみ、 最終的には総合考察を書けるようになったのかと思っています。

【執筆を終えて自分なりに満足していること】

12月の提出については、時間に追われるばかりでなんとか体裁を整えるのに精一杯でした。アンケートをとっていましたので、 その方法や結果などは早めに取り組めましたが、問題意識が固まらないため、考察や総合考察まで練って考えられなかったというのが正直なところです。 口頭試問を終え、その後の書き直しにおいて、中間先生から様々アドバイスをいただき、なんとか書き終えることができました。 そのアドバイスの中には、12月の段階では気付かなかった新しい視点がたくさんあり、それを含み書いていく中で、 平面的だった文章がだんだんと立体的になってきたような気がします。最初はレジリエンスを高めることに主眼がありましたが、 中学生がもつレジリエンスの特徴を挙げられたことについては満足しています。これは先行研究と異なる結果でしたが、 先行研究と異なっても、それは研究の結果であり、成果であるという先生の言葉に救われました。 また、レジリエンスとネガティブライフイベントは関係がなく、ネガティブな出来事の後にこそ レジリエンスを発揮してほしい(発揮できる)という視点に関しては、予想した結果は出ませんでした。 これに関しても、レジリエンスはネガティブな出来事のあとに発揮できるという思い込みをもたないという教師の視点が必要であることが示唆され、 これについても、これからのレジリエンス研究に必要な視点であると先生に言っていただいたことは、 この研究したからこその結果であったなと思っています。

【後輩へのメッセージ】

 修士論文について、最後は体力と気力です。それを維持するために私が行ったことは、次のようなことでした。
 ・2週間前からは外部との連絡を断ち、予定は入れない
  ・食欲は落ちても必ず食べる
  ・睡眠は4〜5時間は必要
  ・日々の癒しをつくる(Jazzを聴く、甥っ子と遊ぶ、酒を飲む、ヨガに行くなど)
  ・リラックスグッズを活用(めぐりズム、アームクッション、入浴剤)
  ・修論提出後のお楽しみをつくる(ライブ、飲み会、食事会、買い物、旅行など)

  とは言え、かなり精神的につらい時期がきます。その時に、仲間と分かち合う、そのつらさを乗り越えた先輩に愚痴るなど、 自身がいっぱいになる前にコントロールしないと暴走する可能性があります。 かく言う私もかなりヤバいと感じる時期がありました。正直、このしんどさは職場では味わったことのないものですので、 普段の付き合いのある友達や同僚ではとても分かってもらえるようなものではないと感じました。 私は、経験者のみが分かり合えると感じましたので、本当に本当に切羽詰まった時には、 中間先生にも愚痴を聞いていただきました。先生は修士はもちろん博士、それ以降、 様々な“締め切り”の修羅場をくぐってこられた方なので、気持ちをわかってくださいました。 安心して聞いてもらってください。先生は最後まで付き合ってくださいます!がんばってください。   


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