修論執筆を振り返って
曲 五月(2018年3月)
修士論文タイトル 子どもの不登校経験にみる母親の心理変容過程
―中年期女性に焦点を当ててー

【どうしてこれに着目したのか】

 私は中学校教員として働く前は、中学校の別室指導員として毎日学校に登校はできても教室に入れない生徒と時間を過ごしていました。そこでは自分の気持ちを話す生徒もいれば、そうでない生徒もいましたが、どの子も教室に行くことは「No」でした。ここにいるのにどうして教室にいけないのか。でも徐々に学校に来ているかだけでもこの子たちにとっては精一杯頑張っているのだと思うようになり、学校に来られない生徒はどうしているのか、どんな気持ちで過ごしているのか考えるようになったことが「不登校」をテーマにした私の研究の出発点でした。
 その後も不登校の児童生徒は増加傾向になり、教育だけでなく社会的な問題として扱われるようになりました。そして、教員としてやっていく中で生徒が学校への登校しぶりが始まり、それが不登校になっていく過程を見ていくこともありました。また、不登校になりかけている生徒だけでなく、保護者である母親とかかわる中で母親たちが初めて抱える不安や葛藤に触れ、母親も理解し支えることが必要だと考えるようになりました。我が子の危機に直面する母親の心の変化がどんなプロセスを経ていくのか。そのことを明らかにすることで、これからの不登校問題の一助になればと考えたことが大きかったと思います。

【苦労したこと】

  「不登校を経験した子どもをもつ母親」をテーマに決め、研究方法はインタビューにすることは早くから考えていました。しかし、質的研究法のどの分析方法でどのようにして明らかにしたらいいのか。この段階でかなり迷い、前に進めない状態がかなり続きました。私が明らかにしたいことが本当にこの方法で明らかになるのか。いろいろな方法の論文を読みながらも自分の中で納得できない、けれどもやらなければならない。考え悩みながら、何を明らかにしたのかさえもわからなくなる途方に暮れた状態でした。今から考えると、迷っている段階で何を明らかにしたいのか、まだ自分自身の問題意識に向き合えていなかったことと勉強不足が大きな原因なのだと思いました。

【執筆して自分なりに満足していること】

 3人の不登校を経験した子どもをもつ母親の方々にインタビューを行い、中間先生のご指導の下、Hermans & Kempen(1993)の自己対面法(self-confrontation method)を参考にした分析方法で心理変容過程を明らかにできたことは、自分の研究テーマに添えたと思っています。 また、母親たちの心理変容過程を考察する中で私自身にも同じような課題があるのではないかと思わされることもありました。自分が明らかにしたいことは、自分の中にあるという、私自身が自己との対話ができたような気がします。

【後輩へのメッセージ】

 中間先生は、常に研究テーマの問題意識は何なのか?研究目的は何なのか?をはっきりもつことを私たちに言われていました。修論を書き終えて、そのことの大切さを実感できています。研究の途中で悩み苦しむことは多々ありますが、その原点に返るとまた踏み出せるように思います。そして、中間先生は優れた指導力で、より研究を深め、興味深くなるよう導いてくださいます。
  研究をする、修論を書くというのは、最後は自分自身との戦いですが、つらく厳しい中でもゼミやコースの仲間と互いに励まし合うことで乗り越えることができました。ここでの人のつながりを大切に研究に思い切り取り組んでください。 ともっと学びたいという大学院生・大学生の皆さんとの一期一会を大切にして、充実した兵教生活を過ごしていただきたいと思っています。陰ながら応援しています!


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