修論執筆を振り返って
長谷 守紘 (2020年3月末) |
修士論文タイトル |
中学校から高校への学校移行における時間的展望と学校適応 |
【どうしてこれに着目したか】
中学校での教員生活を振り返ってみると,高校への進学をきっかけに前向きに登校できるようになった生徒もいれば,
逆に進学先の高校でうまくいかずに退学したという生徒もいました。
学校移行は成長へのチャンスでもあり,ピンチも内包しています。
このような経験から私は,生徒たちの人生において重要な転機となる学校移行に着目したいと考えるようになりました。
そして,中学校教師としてどのような形で生徒を送り出したら,
高校において生徒たちが前向きで充実した生活を過ごすことができるのだろうかという問いに本研究で取り組むことにしました。
また,これまで学校教育では,将来への希望や目標を持たせることによって充実した現在を過ごすことができるように指導してきました。
しかし,現代は希望のない社会といわれ,青年が未来への見通しをもつことが難しい時代です。
そのような時代において,中学校と高校を接続した適応支援をしていくためには,未来展望だけではなく,
現在と未来のつながりや過去に対するとらえ方にも着目する必要があるのではないかと考えました。
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【苦労したこと】
第一に,何を明らかにしたいのか,まだ何が明らかになっていないのか,それを明らかにすることにどのような意義があるのかと,
問題意識を醸成するために多くの時間を割きました。
第二に,目的をはっきりさせた上で,それらを明らかにするためにはどのような調査をしたらよいのか,
研究方法や質問内容を吟味したり,集めたデータの分析方法を定めたりすることに悩みました。
第三に,spssを用いた統計的な分析には特に苦労しました。統計の基礎やマニュアル本を傍にパソコンとにらめっこ状態でした。
困ったときは,中間先生のご指導でいつも解決に導いていただきました。また,お作法にのっとり記述していくことにも苦労しました。
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【執筆を終えて自分なりに満足していること】
本研究を通して,中学校卒業期に向けて,現在と過去のつながり,現在と未来のつながりを高める働きかけを行うことによって,
移行に伴う適応状態が良好になる可能性があることが示されました。
来年度からは学校現場に戻り,本研究によって得られた知見を実践していきたいと思います。
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【後輩へのメッセージ】
まず,附属図書館を有効に活用することをおすすめします。私も必要な文献を取り寄せたり,
希望図書を購入してもらったりして,なるべくたくさんの文献に当たるように努力しました。
論文を読む際には,そこから研究方法を学んだり,結果や考察を批判的に検討したりするとよいことを中間先生から学びました。
また,それらを読みっぱなしにせず,内容をまとめておくことによって,いざ論文を執筆する際に役立ちました。
次に,同じ志をもつ仲間たちを見つけ,積極的に交流することをおすすめします。
例えば,学内ではコースやゼミのメンバー,学外では学会の参加者がいます。
そこでの交流を通して,自身の研究内容について他人に伝えてみると,自分の理解や考えが不十分であることに気づかされます。
また,仲間との交流は息抜きになったり,刺激をもらったりできます。
最後に,健康な身体あっての研究です。心身のコンディションを整えながら,見通しをもって研究を進めていってください。
後輩の皆様方の研究を拝見する機会を楽しみにしています。
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