修論執筆を振り返って
名田 文子(2023年3月)
修士論文タイトル 自己への気づきを促すアート表現の可能性
―可視化・空間化された自己世界の検討を通して―

【どうしてこれに着目したか】

 私は、アート表現を通じて自分の受け入れがたい面を受容することができたという経験があります。それで、アートは自己とのコミュニケーションに役立つと考えており、このことを研究のテーマにしました。また、この研究では「対話的自己論」を基盤にしましたが、この概念には、大学図書館の書架から自己論の本をあれこれ読んでいる中で出会いました。難しくて理解しにくいながらも「多数の私が心の中で対話的関係をつくる」という自己観に魅力を感じました。

【苦労したこと】

 大学卒業時は「卒業制作」だったため、論文を書くというのが全く初めてでした。そのせいもあって、私は修士論文をかなり甘く見ていたと思います。ページ数の多い最終レポート、くらいの認識だったのです。  
6名の大学生の協力を得てアート表現活動とインタビューの調査を実施したのは、とても楽しかったのですが、「その結果から何を取り出すのか」というところで途方にくれてしまいました。とにかく書いてみようと思い、気づきや考えを文章にしてみましたが「深く味わってはいるんだけど、これは『感想』であって『考察』じゃない」と指摘されて当惑・・・。

【執筆を終えて満足していること】

 6名の方の豊かな自己世界の様相を見せていただけたことは、本当に素晴らしい経験でした。人それぞれ固有の世界があり、人の心や「自己」への興味や愛しさみたいなものを感じましたし、それを可視化してくれるアートの奥深さも堪能できました。  
また、執筆の終盤、バラバラだったり重複したりしていた部分、部分がいい感じに連結されて、トントントンときれいに並んだ感覚があり、気持ちよかったです。研究って面白いな、もっと続けたいなと思っています。

【後輩へのメッセージ】

 「結局、私はそもそも何がしたかったんだっけ?」というところを考えるのが大事なのかなと思います。締め切りの迫った12月は、かなり余裕がない心理状態になるので、院生同士の愚痴りあい、励ましあいの場は、助けになります。支えあって乗り切ってくださいね。


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