修論執筆を振り返って
田中 康雄(2024年3月)
修士論文タイトル 幼稚園で展開される「ひとり遊び」についての考察
―観察を通して見える遊び姿の多様性に注目して―

【どうしてこれに着目したか】

「ひとり遊び」に着目するまでの変遷として、最初は幼児教育における主体性を考えていました。主体性とは何かという問いに対し、アフォーダンス理論を用いて主体性を理解出来ないかと調べていたところ、その途中で“遊べる子”と“遊べない子”という差異に興味が湧き、実際の子どもの姿を探っているうちに「ひとり遊び」の面白さをそのまま捉える事が出来ないかと思った事が問題意識の生起点です。一度「ひとり遊び」に着目すると、それが現場で評価されることの難しさや遊びとしての面白さを感じ、論として提唱する価値があるように考えました。

【苦労したこと】

問題意識の海を彷徨っている際、「知りたい」という事と「研究する、論じる」という事の違いを感覚的に掴む事に一番苦労しました。後に気づいた事ですが、その当時はきっと結果と考察がまぜこぜになっていたのだと思います。結果を基に考察するという事がはっきりしたのは、恥ずかしながら修論執筆も中盤に入ったころでした。ただ、自分が研究したいと思っていたことの全容が見え始め、自分は何をしていたのかが腑に落ちた時には考察する事が楽しくなる一面もありました。研究について、進め方は個人様々かと思いますが、私は“とりあえず手を進めた”後に、ピースが繋がっていくような経験でした。

【執筆を終えて満足していること】

やりたかった事は出来ました。なので、修士論文を書き終えた事自体に満足しています。執筆とは少しずれてしまいますが、もともと幼児教育という膨大な不思議を前に、何が出来るかと思って大学院に進学し、発達心理学、歴史学、社会学、哲学等様々なアプローチで幼児教育を授業や読書会から考察出来た事も非常に満足しています。

満足はしていますが、修士論文で取り扱った事は幼児教育のほんの一部分です。そのほんの一部分の執筆に対しても、後の助言や反省から“こうすればより良くなる”事はたくさんありました。幼児教育に触れていると、問う事には事欠かないので、引き続き問い続けたいと思います。

【後輩へのメッセージ】

「目の前にある課題をこなす」のは、大学までです。大学院では幼児教育以来となる、「自分の好きな事を好きなように取り組む(遊ぶ)」場所です。自分で決めるという行為は勇気がいりますが、そこには様々な手立てがあります。自分の想いや力だけに頼らず、先行研究や図書館等は積極的に利用するのがオススメです。自分の力で進むのですが、自分だけの力はたかが知れています。中間先生は本当に根気強く、示唆に富んで、道案内をしてくださいます。他の院生の、視座の異なるコメントも面白いです。知る事は楽しいです。是非、良い研究ライフをお過ごし下さい。


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