修論執筆を振り返って
綿貫 克洋(2024年3月)
修士論文タイトル 自己調整学習の観点からみた学習過程の多様性と学習者の個人差の検討 ―問題解決を主眼とする高校生の探究活動において考慮すべき要因として―

【そのテーマを設定した理由】

大学院入学前は学習における「失敗」や「試行錯誤」が与える影響というものに興味がありました。しかし、大学院に入った時に自己調整学習の理論に出会い、M1の前期は学習における自己調整過程について基礎的な部分を固めていきました。

現職教員として高校の探究学習に関わっていたため、M1の後半は「探究学習」に加えて「協働的な学び」の方向に研究テーマを絞りかけていましたが、「自己調整学習」との接点も模索していたため、迷走していました。最終的にM1からM2にかけての春休みに、中間先生の「せっかく学ばれた自己調整学習はどうされますか?」という一言をきっかけに練り直し、探究的な学習と自己調整学習を軸にテーマを決定しました。

【苦労したこと】

先述のようにテーマ設定そのものに苦労しました。さらに、研究1として「インタビュー+質的分析」、研究2として「質問紙調査+統計」、という組み立てにしたため、データ収集および分析にとても苦労しました。文字起こしやSCATを用いた質的データ分析はデータ量が多かったことに加えて、概念化の過程は適切な言葉が見つからなくて自分の語彙力不足を嘆きつつ、何度やり直しても終わりが見えない、研究が進んでいない感覚が常にありました。

さらに、質問紙調査は探究の過程に沿って継続的なデータを取ることを試みましたが、いろいろ働きかけをしたものの十分なデータ量が確保できず、当初の研究計画から大きく修正しなければなりませんでした。計画の修正をした時期と質的データ分析に追われている時期がかぶってしまったため、この頃が一番厳しい状況だったと感じています。

自分の内面においては、「研究活動」に対するトラウマの克服や動機づけの維持も大きな課題でした。研究活動に対する自己効力という意味では、結果期待はあるものの、効力期待(自己効力)はとても低かったため、日々、動機づけ調整方略を用いながら研究を進めていました。

【執筆を終えて満足していること】

人生におけるトラウマを一つ乗り越えられたと感じています。しかし、ある部分では乗り越えていても、別の部分ではまだまだであったり、新たな課題に対して向き合えていなかったりするところがあるため、満足を感じつつも慢心であってはいけない、と思っています。

もう一つは探究学習と自己調整学習の理論について理解を深められたことです。あくまでもゼロを基準としたときの少しばかりの進歩という意味ですが、今後現場に戻ったときに生かせることがあると感じています。

後悔としては、「中間先生にもっと自己論について教わっておけばよかった」「探究学習と自己形成という方向もあったのに…(自分の心の声)」ということです。

【後輩へのメッセージ】

私の研究は高校生の探究活動に焦点を当てましたが、探究の過程は研究活動と基本的に同じ構造をしており、調査データを分析することを通して常に自分自身の研究過程を分析していました。その中で私自身を自己調整させていたという構造が面白かったです(調整できたかどうかはともかく)。

ご指導をいただいた中間先生は大変学生思いで、「研究とはこういうことですよ」というのを研究指導における一言一言の言葉以上に、その姿勢で示していただいたと思っています。「学生を包み込む温かさ」と「研究に向き合う時の冷静さ」が中間先生の魅力なのかも、と勝手に思っています。

研究をする過程においては、常に自分と向き合うことになります。研究を深めていく過程と、自分自身を探究する過程が重なるのだと思います。私自身は中間先生のもとだったからこそ修士論文を書き終えることができたと実感しています。


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