本学の数学教室は,修士課程においても,実践的な数学教育学の研究を生み出してきていましたし,教科と教科教育の架橋を意識してきましたが,教職大学院では,教科専門と教科教育学の架橋をより強化しています.教職大学院は,修士課程とどう違うのでしょうか.
もともと大学院は研究機関でした.その意味で,修士課程は本来的には研究者を育てるためにあると言えます.ですが,教員養成系の大学院では,学部レベルの教員養成を超える高度な専門性をもつ学校現場での教員を育むという側面を持つようになってきていました.そこで,あらたに設置されたのが教職大学院です.
●教職大学院では,理論を踏まえた研究も行いますが,上記の理由から実践的な教育を重視し,実習が必ず位置付けられています.ここでの実習は,実践研究のフィールドとしての実習になります.
●また,大きな違いとして,修士論文の提出の有無があります.修士課程では学位論文として「修士論文」を書き上げ,学位審査を受ける必要がありますが,教職大学院にはそれがありません.しかし,それでは2年間での学びが成果物として残らず,散逸しやすいものになってしまいます.そこで,本学では修士論文に代わる成果物として,「教育実践研究報告書」を書くこととしています.内容は,修士論文とかなり性格の近いものとなっていますが,実習での実践を踏まえた内容となります.
●教科専門としての数学の授業も,純粋に現代数学を教える様な内容ではなく,教材研究や教科としての数学にかかわりのある内容となっており,授業実践改善への契機となるような内容を意識して精選しています.また,数学教育に関わる授業も,より実践性を意識した内容となっています.